彼シャツ問答

 NRCに通っていた頃、オレはよくに自分の古着を渡していた。
 アイツ、こっちに来た当初は生活費カツカツで服代に回す余裕なんてなくて。制服と売れ残ってタダ同然だった面白シャツで日々やりくりする……と、見ていてなんだか哀れみを覚える状態だった。
 だから男装してるなんて気づいてなかったオレはまあはチビだし……友達だし、ちょっとぐらい助けてあげてもいいかなと思ったわけだ。それを対価に今後もノート写させてもらおうって下心もあったけどね。
 デュースもオレと同じく、もうサイズ的に着れない服を渡していたけれど、はオレのお下がりを着る割合の方が多かった。
 単純にオレの方が自分の趣味に合った(オレはシンプルなのをチョイスしたけど、デュースはピンクの全豹柄とかモロヤンキーじゃん!ってデザインばっかりだった)からだと。そう当時の彼女は言っていたし、オレもアレは人選ぶよなって納得していた。
 ただ、そのわりにある程度自分で服を買えるようになっても時折着ていたから不思議だった。

 謎が解けたのはがオレの彼女になってから。は相変わらずオレのシャツを部屋着代わりに愛用していて、だから「お前、その服そんな気に入ったの?」と訪ねてみたのだ。
 じゃあは恥ずかしそうに「エースの匂いがして落ち着くから、つい……」と本当の理由を白状した。そのときのはめちゃくちゃ可愛くてベッドの中に連れ込みたかった。
 着用していたのが、オレがあげた中で唯一のネタTシャツじゃなかったら絶対連れ込んでた。
 なんだよマンドラゴラ王国建国記念日って。文字だけ見たらオシャレなのに意味知ってたら集中できねーよ。
 というかなんでそんなTシャツ持ってたんだよ、オレ。あーラッキーバッグの外れ商品だわ。間違ってもオレの趣味じゃない。
 だがその会話以来、はオレのお下がりを着てくれなくなった。なんか知られてからは恥ずかしいと。結婚した今でも、オレが知らないところではちょくちょく着てるっぽいし、頼んだら着てくれるんだけど違うんだよな。
 自主的に着てるのが見たいし、あわよくば……ウソ、絶対の絶対にめちゃくちゃに抱きたい。

 オレのそんな切実なお願いが届いたのか。今、目の前にはオレのYシャツ一枚ですぴすぴとソファで寝息を立てるがいる。
 今日も遅くなるかもと言っていたから油断していたんだろう。想像以上にグッときた。仕事の疲れだって一瞬で吹っ飛んだし。
 遠慮なく彼女に覆い被さるようにオレもソファに上がる。ギシッと二人分の体重にソファが軋み、その音での瞼がゆっくり開いていった。

「んっ、う、ぅ……えーす?」
「ただいま、あといただきまーす」
「いた……? ぴゃっ!!」

 寝起きで頭が回ってないんだろう。寝ぼけまなこの彼女はぽやぽやしていたが、おかまいなしに裾から太ももをなでる。あいかわず良い反応するよな、お前。
 どうやったってヤる気満々のオレに適うはずがないのにはぐいぐいと胸を押して逃げようとする。ならば、やだやだと言う彼女の唇を塞ごうとするが、それも顔をのけぞらせて避けられた。
 こんな子猫にじゃれつかれてるぐらいの抵抗、ちょっと力を入れただけで簡単に強行突破できる。だけどそうなると後が怖いっていうか、長いことおあずけ食らうことになりそうだしな……。

「ちょっとーそんな拒否られたらオレ傷つくんですけどー、なんで嫌がるわけ?」
「……どうしても言わなきゃだめ?」
「言わなかったら問答無用でする」
「えーっと、脱いでからならいいよ」
「ってことはオレの服を着たままするのが嫌ってことね。なんで?」

 オレの追求にはしくったって顔をしている。は気を許した相手には感情が顔に出るタイプだった。とりあえずオレとのセックス自体は問題ないとわかって、ちょっと安心したのはには内緒だ。
 見破られただけども赤い顔をしているが腹は括ったらしい。もにょもにょと口を動かした後、蚊の鳴くような声で呟いた。

「いっぱいエースの匂い感じながらしたら、頭、変になっちゃいそうな気がするから、やだ」

 そういえば前オレが頼んで着てもらった時は下にエロいランジェリー身につけて、早々に脱いでいたことを思い出す。あれサービスじゃなくて作戦だったのかよ。
 まあなんにせよ、オレが出した結論は一つ。唇を奪って、それから混乱しているだろう彼女の首筋へとキスを落としていく。

「エース、待って、私ちゃんと言った!」
「そうだけど、オレとのセックスでおかしくなってる見たいし」
「い、いじわる……!」
「可愛いこと言うお前が悪い」

 太ももを撫でられながらはぴゃあぴゃあ騒いでいるが、さっきほどの抵抗はない。オレの性格を熟知している彼女は結局こうなることを予想していたんだろう。よくわかってんじゃん。
 なら遠慮する必要なんてないよな。シャツの裾をめくる。いつもよりとろとろになる彼女を想像しながら、興奮にオレは自分の唇を舐めた。

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